理系頭巾の知見

なんちゃって理系の頭巾が知ったことや考えたことをまとめているブログです。

理系頭巾の知見

DIR EN GREYが好きだ。(前編)

『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』─────。
なんだこのタイトルは、と思った。
X JAPANやLUNA SEA、黒夢、L'Arc~en~Cielといった所謂「V系」の世界観に心酔し厨二病を日に日に拗らせていた中学三年生の僕。DIR EN GREYとの出会いがその厨二病を一層加速させ、人格形成に深い影響を与えるほどの決定的存在になった。


「バンド名は何度か見たことがあるものの、敷居が高くて聴きづらそう」
当時の僕がDIR EN GREYに抱いていた印象だ。無理もない。僕が初めてDIR EN GREYの楽曲を聴いたのは中学一年生の頃。アルバム名は『THE MARROW OF A BONE』。一曲目の「CONCEIVED SORROW」は今までに僕が聴いてきた音楽とはかけ離れ過ぎていた。
小学生の頃は音楽にあまり関心がなく、中学生になってから邦楽を聴き漁り始めた当時の僕にとって音楽は「聴いていて何だか楽しくなってくるもの」「サビで気持ちよくなるもの」程度の認識しかなかった。なのでDIR EN GREYの、もとい「CONCEIVED SORROW」の陰鬱さ、救い難い絶望的な感情を露わにした歌声は受け入れることが出来なかったのだ。敷居の高さに跳ね返され、『THE MARROW OF A BONE』の二曲目を聴くこともなく僕はCDを返却した。
しかしそれから二年が経ち、先述した様に僕はDIR EN GREYもカテゴライズされる「V系」と言われるジャンルの音楽に帰着していた。無意識のうちに心の底に溜まる憤りや怨嗟、表面的なコミュニケーションでは他人と共有することの出来ない感情の昇華を音楽に求めて。
分かり易さが好きだった。悲壮、怨恨、自棄⋯⋯そういった感情を芸術的な表現を以って優しく仕上げるのではなく、直情的に獣の如く歌い上げた本能的なジャンル。自分の腹の底に居る感情の正体に最も近く、代弁してくれる様な存在。しかしその様に「V系」というジャンルが自分の求めるものに近いと思いながら多くの楽曲を聴いても、どこかまだ満たされない。自分の感情を全力でぶつけても、それを巻き込む圧倒的な表現で別の境地に連れ去って行くような楽曲に出会いたい。そう考え手当たり次第に多くのバンドに触れていった結果、僕は再びDIR EN GREYに辿り着いた。
『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』がオリコン週間ランキング2位を獲得した、というニュースサイトの見出しはかなり衝撃的なものだった。DIR EN GREYの人気は把握していたつもりでも、以前聴いた「CONCEIVED SORROW」の印象が未だに残っていたからだ。万人受けするような音楽性でないことは間違いない。しかし今週日本で2番目にCDを売ったバンドがDIR EN GREYであり、その音楽性に惹かれて購入したファンが沢山いる。ならばその魅力は、自分にも必ず理解できるものである筈だ。そしてきっと、今なお満たされない感情の溝を満たしてくれるに違いない。僕にとって、DIR EN GREYへの二度目の接触が始まった。


今でも初めて『激しさと〜』を聴いた時の衝撃を覚えている。正直に言って、全く理解できなかった。
メロディアスにタイトルを歌い上げた次の瞬間、雪崩の如く押し寄せるグロウル。どこからか金切り声が聴こえたと思ったら異様にキャッチーなサビ。あっという間に4分が終わった。
デスボイスを多用する楽曲にあまり触れたことが無かったため当然と言えば当然なのだが、曲を聴いて呆然としてしまったのは初めての経験だった。歌詞を見ながらもう一度聴いてみる。サビ以外の部分が今どこを歌っているのか分からない。もう一度、もう一度⋯⋯と繰り返しているうちにようやく聴き取れるようになった。歌声に集中しながら楽曲の正体を考え続ける。しかし歌詞が複雑怪奇で全く具体的な情景が思い浮かばない。想起されるのはジャケットにある様な、紅色の世界だけ⋯⋯。
それから毎日『激しさと〜』を聴き続け、ある発見をした。それは楽曲の根底に流れる感情が、受け手である僕の状態で変わり得るということだった。それは時に義憤であり、或いは破壊的な欲求である。この事実に気が付いた時、僕はDIR EN GREYこそ求めていた楽曲を提供する存在なのだと確信した。


そこから先は早かった。DIR EN GREYの魅力が比較的分かり易く表現された『鬼葬』『VULGAR』『Withering to death.』を順に聴きその世界観に心の底から心酔する日々。後に『THE MARROW OF A BONE』も聴き直し、一番最初に同アルバムを手に取ったことを若干悔いつつその魅力を再確認した。
そして遂に、それらアルバムの要素やDIR EN GREYの活動を全て包括するような作品に出会った。
────そう。『UROBOROS』である。

(後編へ続く)