理系頭巾の知見

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「勉強する意味がない」なんて、寂しいこと言わないでくれよ

先日SNS上で彼が発信した言葉を、僕は大学院卒業まで忘れないだろう。
「将来研究者になるわけじゃないから、物理学なんて勉強する意味がない」
彼は僕が大学入学時に初めてしっかりとした"会話"をした人だった。


無意識のうちに今後つるむ人間かどうかを見定め値踏みするように互いを牽制し合う会話ばかりだった学部新歓。
そんな中で僕は彼と出会い、趣味が共通する彼との会話は背伸びを必要としない純粋な"会話"になった。
お互い新しい生活、初めての一人暮らしにわくわくしていた。
一緒に買物にだって行った。スーパーの相場をよく知らないから、変な買い物になった。
今思えば僕達のはしゃぎ方は、高校四年生だった。
でもそれで良かったんだ。大学生になったからといって、急に精神的に成熟する訳がない。
何より一人暮らしを始めたばかりの僕にとって、打ち解けて気ままに話しが出来る存在がどれだけ有難かったか。
彼はもう忘れてしまったかもしれないが、僕はまだ鮮明に覚えている彼との会話がある。
「大学院、どこに進むつもりなの?」
僕はそう聞かれて驚いた。入学したばかりのこの時期に、もう大学院のことを考えてるのかと。
「まだ考えてないなぁ」
と僕は答えた。しかしその数秒後に、僕は不安になってこう付け足した。
「研究次第で、他の大学の院に行くのもありだよね」
すると彼から意外な答えが返ってきた。曰く、四年生の時点で所属している研究室やそこで行った卒業研究から続けて内容を深めることができる同大学の院に進んだ方がいい、と。
僕はその真偽が分からず、しかし彼なりの考えが既にあることにただ感心していた⋯⋯。

それから月日が流れ、お互い違うサークルで活動するうちにいつの間にか入学当初の様に会話をすることはなくなった。
僕は劣等生であったため、サークルに集中しつつ真面目に講義を理解している彼に引け目を感じる様になったことも大きい。
それでも僕が院試に合格すれば、彼もまた同じ大学に残るのだ。
なんとなくそう思いながら僕は院試の勉強に励んだ。
結果僕は合格した。
そして後に、彼が大学院に落ちて就活を余儀なくされていることを知った。


「将来研究者になるわけじゃないから、物理学なんて勉強する意味がない」
多くの就活生が既に内定先を決めた中かなり遅れたスタートダッシュを切った彼が、どういう気持でこの言葉を投げかけたのかは分からない。
四年間の間に互いの趣味も変わってしまっただろう。大分前から、もう入学時に出来た趣味の話でお互いに会話をすることが出来ないと思っていた。
そんな彼との唯一の共通点はやっぱり学部のこと、そう、物理だった。
しかし、それも否定されてしまった。

僕は研究者になれるほど知識に富んだ学生ではない。
それでも、大変な受験勉強を乗り越えて入学し四年間を捧げた学問を簡単に切り捨てることは出来ない。
だから入学当初の僕にとって唯一の友達であり、多くの新鮮な考え方を示してくれた彼が発したその言葉は悲しかった。
「勉強する意味がない」なんて、寂しいこと言わないでくれよ。
僕と君の間にあった信頼感を築くためには、その"意味のないもの"が不可欠だったんだから。